「なりたいものがない」は普通じゃない?進路白紙の子どもに今すぐできること〔0021〕

「うちの子、将来どうしたいのか全然話してくれない…」
「何も考えていないのかな」と心配している保護者の方は多いのではないでしょうか。

実は、子どもが進路について「白紙」のまま高2・高3を迎えるケースは珍しくありません。でも、放置すればするほど選択肢は狭まっていきます。今日は、そのリスクと、保護者にできることをお伝えします。
文系・理系の選択など、高1の秋ごろになると高校で進路の話が出てきます。
そのときに真剣に考えて進路選択ができればよいのですが、意外と流れに身を任せてしまい、後になって進路に困ってしまう子もいます。
「何も考えていない」は、本当によくあること
まず安心してください。子どもが進路について無口なのは、あなたの育て方のせいではありません。 思春期の子どもにとって、「将来」というテーマは漠然としすぎていて、どこから考えればいいかすらわからないのが普通です。
しかし「よくあること」と「問題ない」は別の話です。進路探索(Career Interest & Exploration)を支援する研究を行ったアメリカのNational Mentoring Resource Center(2021年)は、次のような実態を指摘しています。
青少年の間では、職業の選択肢についての認識が乏しいという問題が広く見られ、 メンタリングは若者の進路への関心と探索(Career Interest & Exploration)を促進する可能性がある。 進路探索に焦点を当てたメンタリングの介入は、一定の成果を示している。
出典: Stelter, R., Melton, T., & Stewart, K. (2021). Mentoring for Enhancing Career Interests & Exploration. National Mentoring Resource Center.
つまり「なりたいものがわからない」子どもに必要なのは叱責ではなく、進路を探索するための環境と関係性なのです。
白紙のまま放置するとどうなる?
進路を「なんとなく」で決めてしまうことのリスクは、大学入学後に特に顕著になります。 入学後すぐに「思っていた学部と違う」「やりたいことが見つからない」と悩む学生が増えているのは偶然ではありません。
75%
メンターを持って育った人のうち、75%が「そのメンターが人生の成功に大きく貢献した」と回答。 一方で多くの若者が、必要なときにメンターを持てなかったと報告しています。
出典: MENTOR (2023). Who Mentored You?
思春期に信頼できる相談相手を持つことが、将来の充実度に直結している——これは、数多くの研究が示している事実です。 そして、その「相談相手」が必ずしも親や先生である必要はありません。
なぜ「ちょっと年上の先輩」が最も効果的なのか
親が「将来のこと、ちゃんと考えてる?」と聞いても、子どもは「うん」とだけ答えて終わり——よくある光景ですよね。 実は、この現象には心理的な理由があります。
子どもは親に「心配させたくない」「否定されたくない」という気持ちから、本音を話せないことが多い。 しかし、同世代に近い「先輩」には驚くほど本音を話すのです。

「ニア・ピア(near-peer)メンター」——つまりメンティーより少し年上で、自身が直面していた経験を最近通り過ぎてきた人物——は、年齢の近さゆえに社会的な一致感(social congruence)が高く、親や教師よりも強い影響力を持つ場合がある。 研究によれば、ニア・ピアにチューターされた学生は、教員にチューターされた学生と同等かそれ以上の成果を示している。
出典: Anderson, R. C. et al. (2025). The development of science identity through near peer mentoring and research experiences. Journal of Applied Developmental Psychology, 97, 101765.
「ニア・ピアメンターは、現代の言語や視点を共有しているため、よりオーソドックスな大人のメンターよりも大きな影響を与えることができる」
— Anderson et al., 2025(要約)
「話す」こと自体が、進路を整理する
「うちの子は相談が苦手で…」と思う保護者もいるかもしれません。でも心配いりません。 むしろ話すことそのものが、子ども自身の思考を整理するという研究結果があります。
思春期の若者において、仲間への愛着・親密さ・相互性の高さは、進路の探索意欲や、進路の選択に向けた前進と有意に関連していた。 一方、親への愛着もある程度の影響を示したが、仲間関係の影響はそれとは独立して確認された。
出典: Blustein et al. (1995). The Role of Peer Relatedness in Late Adolescent Career Development. Journal of Vocational Behavior.
つまり、進路は「考えてから話す」のではなく、「話すことで考えが深まる」もの。 信頼できる相手との会話の中で、子ども自身が自分の興味や価値観に気づいていくのです。

ピア・メンタリングの体系的レビューは、ピアメンタリングが社会的・学術的統合、感情的メリット、大学生活のバランス、所属感の向上など、多様なアウトカムで好ましい影響を与えることを示した。
出典: Gehreke (2024). Effectiveness of peer mentoring in the study entry phase: A systematic review. Review of Education.
では保護者にできることは?
1.「答えを求める」質問をやめる
「将来どうするの?」より「最近おもしろいと思ったことある?」の方が会話が広がります。進路の話を直接しようとすると、子どもは防衛反応を示しやすいです。
2.「第三者に話す場」を作ってあげる
親でも先生でもない、年の近い大学生などに話す機会を作ることが、子どもの進路探索を加速させます。「先輩の話を聞いてみたら?」という促しが効果的です。
3.焦らず、でも早めに動く
「まだ時間がある」は錯覚です。高2の今だからこそ、じっくり進路を探索できます。高3になってから慌てる前に、話す習慣を作っておくことが重要です。
📋 この記事のまとめ
- ✓ 「なりたいものがない」子どもは多い。でも放置はリスク。
- ✓ 子どもは親より「ちょっと年上の先輩」に本音を話しやすい(研究で確認済み)。
- ✓ 話すこと自体が進路の自己理解を深める(Blustein et al., 1995)。
- ✓ 保護者にできることは「話す場を作ること」。答えを出させることではない。
- ✓ ピア・メンタリングは学術研究で効果が確認されている支援手法。
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