ゴールデンウィーク明け、子どもが「学校行きたくない」と言ったとき——不登校の入口を防ぐために保護者ができること〔0025〕

5月は「不登校の入口」になりやすい

ゴールデンウィークが明けた翌朝、お子さんが布団から出てこない。「お腹が痛い」「頭が痛い」と言い出す。そういった経験をした保護者の方は少なくないでしょう。

これは決して珍しいことではありません。春休み明けの4月や大型連休明けの5月にも不登校が増加する傾向があり、特定の日だけでなく「節目」の時期に子どもの心の変化を丁寧に見守る必要性が高まっています。 Famcampus

大人の世界にも「5月病」という言葉があります。4月に社会人としての生活をスタートさせ、1か月が経ったこの時期に「なんとなくやる気が出ない」「朝起きるのがつらい」「行きたくない」そんな気分になることがある。 Orita-mental子どもも同じです。4月の新学期から1か月間、新しいクラス・新しい先生・新しい人間関係の中で無意識に緊張し続けてきた。その緊張の糸がゴールデンウィークで一度ほぐれた瞬間、「戻りたくない」という気持ちが一気に表面化するのです。

これを「サボり」や「わがまま」と決めつけてしまうのは、少し待ってください。

不登校は今、過去最多水準——他人事ではない

文部科学省の調査によると、小・中学校における不登校児童生徒数は合計で353,970人(前年度346,482人)で過去最多となり、12年連続で増加している。 Impress

在籍する児童生徒全体に占める不登校児童生徒の割合は、全国平均で小学校2.30%(約44人に1人)、中学校6.79%(約15人に1人)です。計算上は中学校ではクラスに2〜3人程度は不登校の生徒が存在することになります。すでに不登校は珍しいケースではなく、誰にでも起こりうるものと考えておいた方がよいでしょう。 New-schoooool

さらに、これは氷山の一角です。認定NPO法人カタリバによる調査では、「部分・教室外登校」「仮面登校(ほぼ毎日、学校に通いたくないと思っている生徒)」を含めると、中学生の約5人に1人が「不登校」または「不登校傾向」に該当することが示されています。 School-voice-pj

数字が示しているのは一つの事実です——「うちの子に限って」という時代は、もうとっくに終わっている。

「中1ギャップ」「高1クライシス」——進学の節目は特に危ない

「中1ギャップ」は、中学校に入学したばかりの生徒が環境の変化や学習内容の変化に馴染むことができず、不登校になったり、いじめなどの問題が増加したりする現象を指します。具体的には「集団が大きくなり、人間関係が複雑になる」「一番上の学年から、急に一番下の学年になる」「定期試験の結果が重視されるようになり負荷が増える」「学級担任制から教科担任制に変わる」といった、様々な変化がその要因だと言われています。 Kei-Net

「高1クライシス」も同様です。学区が広範囲になることで幼少期からのつながりが切れて新しい人間関係を構築しなければならなくなったり、学力レベルの近い同級生に囲まれることで自分の得意分野がそれほどでもないと気づいて自信を喪失したりすることが主な原因だと言われています。 Kei-Net

こうした環境の急激な変化が、ゴールデンウィーク明けという「緊張の糸が切れるタイミング」と重なると、一気に登校困難へとつながるケースがあります。進学したてのお子さんを持つ保護者の方は、特に5月は注意が必要な時期です。

「休ませていいか」——その判断が、その後を大きく左右する

ここが、最も重要な話です。

「行きたくない」と言う子に「じゃあ今日は休んでいいよ」と答えるのは、親として自然な優しさです。ただ、その判断が習慣化したとき何が起きるかを、保護者はしっかり認識しておかなければなりません。

学校を休むことで、子どもは一時的に「つらさ」から解放されます。しかし心理学的に言えば、これは「回避行動の強化」です。嫌なことを避けたら楽になった、という体験が繰り返されると、次に似た状況が来たときにまた「避ける」ことを選びやすくなります。

実際には、1日だけ休んだ後にすぐ登校できるお子さんは少なく、休みが長引いたり、断続的に登校する「五月雨登校」になったりするケースがほとんどです。 Sudachi

ダイエット中に「今日だけ」とお菓子を食べたら、翌日はさらに食べてしまった——そういった経験は誰にでもあるでしょう。人間の意志は、「一度の妥協」を起点に崩れやすい。不登校も同じ構造です。最初の一歩を踏み外すことが、次の二歩・三歩へとつながっていく。

「今日くらいいいよ」と言うとき、保護者はその言葉の重さを受け止めてほしいのです。

では「無理に行かせろ」ということか?——それも違う

ただし、ここを誤解しないでください。「とにかく学校に行かせれば解決」という単純な話ではありません。

「行きたくない」という言葉の裏には必ず理由があります。小学生が不登校になったきっかけで最多は「感覚の過敏さや集中のしにくさなど、発達特性による不安や疲れ」で、次に「クラスメイトとの人間関係がうまくいかなかった」「先生との人間関係がうまくいかなかった」と続きます。 Benesse

行き渋りは突然欠席という形だけでなく、日常のちょっとした行動や体調の変化として現れます。登校前の朝に頭痛や腹痛、吐き気などの身体症状を訴えるのは典型的な行き渋りのサインです。これらは必ずしも病気が原因ではなく、心理的な不安が身体に現れているケースも多くあります。 Willschool

原因もわからないまま「行け!」と背中を叩くだけでは、子どもの心はさらに閉じます。大切なのは、「何がつらいのか」を明確にした上で、その問題を一緒にクリアして送り出すことです。

保護者にできること——「寄り添う」の本当の意味

「子どもに寄り添う」という言葉は、しばしば「行きたくなければ休ませる」と混同されます。しかし本当の「寄り添い」は、子どもの本音を引き出し、足かせをひとつずつ取り除いていく積極的な関与です。

① まず「何がつらいか」を聞く——ただし鵜呑みにしない

「先生が怖い」「友達がいない」「勉強がわからない」——子どもが言う理由は入口にすぎないことがあります。表面の言葉だけで判断せず、その奥にある感情を丁寧に掘り下げましょう。行き渋りの段階で、まず状況を伝えたいのが担任の先生です。相談することで、学校での様子やクラスメイトとの関係、勉強が負担になっていないかなどの細かい状況がわかり、子どもの負担を減らすための対策が取りやすくなります。 Benesse

② 「学校に行くことが当たり前」の土台をつくる

「毎日行くもの」という前提が家庭の中に根付いている子どもは、多少の嫌さがあっても「行かなければ」という規範意識で動けます。これは強制ではなく、生活習慣としての登校リズムの定着です。朝の起床時間・準備の流れ・登校の習慣が乱れないよう、連休中も生活リズムをなるべく崩さないことが予防になります。

③ 小さな成功体験を積み重ねさせる

塾に嫌々通ってきた子が、授業が始まると目を輝かせて授業を受けいる姿やよくあることです。それは「行ってみたら意外と悪くなかった」という体験が、次の一歩を軽くするからです。学校の中に「楽しみの種」を一つでも見つける手助けを、保護者にはしてほしいのです。好きな授業、仲の良い友達、参加したい行事——そのひとつが登校の理由になります。

④ 「今日だけ休む」の代わりに「一緒に考える」

「行きたくない」と言われたとき、すぐに「じゃあ休んでいい」と答えるのではなく、「何がいやなの?」「それ、どうしたら少しましになる?」と問いかけてみてください。その対話こそが、子どもの問題解決能力を育て、翌日以降の登校につながります。

⑤ 様子の変化に早めに気づく

登校と欠席を繰り返しながら徐々に学校から足が遠のく「さみだれ登校」という形があります。最初は週に数回の欠席でも、次第に間隔が長くなり、結果的に不登校へと移行してしまうケースが少なくありません。 Willschool「少し増えてきたな」と感じた時点で、早めに担任やスクールカウンセラーに相談することが重要です。

「学校に行かなくていい」と言う大人への疑問

最近、「学校に行かなくていい」という論調をSNSや書籍で目にする機会が増えました。その意見を語る人たちの多くは、学校という学習環境で育ち、その経験の上に今の立場がある。文部科学省も「社会的自立や学校復帰に向けて周囲の者が適切な働きかけをすることは重要。児童生徒の状況を理解しようとすることもなく、必要としている支援を行うこともなくただ待つだけでは状況は改善しないという認識が必要」と示しています。 MEXT

学校が唯一の答えとは思いません。しかし、学校で得られるもの——集団生活、人間関係、規律、学力、達成感——これらを別の形で代替するのは、それ相応の環境と努力が必要です。「行かなくていい」と言うのなら、その代わりに何を与えるのかを、保護者は真剣に考えなければなりません。

最後に——背中を押せるのは、そばにいるあなただけ

中1ギャップも、高1クライシスも、5月病も、これらは心が乗らないことを表す言葉です。でも、「乗らない」と「行けない」は別物です。

気持ちが乗らない日は、誰にでもある。大人だって月曜の朝がつらいことはある。それでも社会人が会社に向かうのは、「行くのが当たり前」という積み重ねがあるからです。その「当たり前」は、子どもの頃に形成されます。

最初の一歩を踏み出せれば、多くの場合は乗り越えられます。その背中を押せるのは、子どもに一番近いところにいる保護者あなたです。ただし、闇雲に押すのではなく、つらさの正体を一緒に見つけて、クリアにしてから——それが本当の意味での「寄り添い」です。

ゴールデンウィーク明けのこの時期、少しだけ丁寧に、お子さんの朝の表情を見てみてください。


参考資料

  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(2025年10月)
  • 文部科学省「今後の不登校への対応の在り方について(報告骨子)」
  • 認定NPO法人カタリバ「不登校に関する子どもと保護者向けの実態調査」(2023年)
  • 河合塾 Kei-Net「進学時のとまどいはなぜ起こる——小1プロブレム・中1ギャップ・高1クライシス」
  • ベネッセ教育情報「調査でわかった不登校のサインって?子どもの行き渋り初動ガイド」(2026年3月)
  • 大阪府医師会「げんき情報——五月病」

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