子どもは、あなたの分身じゃない ― 思春期に親がやりがちな勘違い〔0044〕

「ちゃんと育てているはずなのに、なぜかうまくいかない」
そう感じたことはありませんか。実はその原因、子育ての知識不足ではなく、「自分の子も自分と同じはず」という思い込みにあるかもしれません。今日は、心理学の視点から「親がやりがちな勘違い」と、その抜け出し方を考えてみます。

① 「自分が育てられたように育てる」が失敗する理由

厳しく育てられた人は厳しく、自由に育てられた人は自由に――。多くの親は、自分が受けた子育てを無意識のうちに再現します。それ自体は自然なことですが、問題は「それが自分の子にも合っているとは限らない」という点です。

例えば
「自分は厳しく言われたから頑張れた。だからうちの子にも同じように言う」
→ しかし子どもの気質や育った時代背景が違えば、同じ言葉でも受け取り方はまったく異なります。あるきょうだいでは効果的だった声かけが、別の子には逆効果ということも珍しくありません。

② 「自分ができなかったことを子にやらせる」も同じ構造

「自分はピアノを習いたかったのに習えなかった。だから子どもには習わせたい」――これも一見、愛情のように見えて、実は親自身の未消化な願望を子どもに託しているケースです。子どもが本当にやりたいかどうかは、また別の話です。

心理学のヒント:自己決定理論
心理学者デシとライアン(Deci & Ryan)が提唱した「自己決定理論」では、人が意欲的に取り組めるかどうかは「自律性(自分で選んだという感覚)」が大きく関わるとされています。親が良かれと思って用意した環境でも、子ども自身が選んだ感覚を持てなければ、モチベーションにはつながりにくいのです。

③ 子は親の分身ではない

親としては、子どもを自分の一部のように感じてしまう瞬間があります。特に小さい頃はそれでうまくいくことも多いのですが、思春期に入り自我がはっきりしてくると、その感覚のままでは衝突が増えていきます。

発達心理学では、思春期は「親からの心理的な分離(個体化)」が進む時期とされています。これは反抗のためではなく、ひとりの人間として自立していくために必要なプロセスです。つまり「距離を取りたがる」のは、成長の証でもあります。

④ 「自分の子なんだから言うことを聞いて当然」という思い込み

血のつながりや「育ててあげた」という事実は、子どもが親の意見に無条件で従う理由にはなりません。むしろ、心理学者バーバー(Brian Barber)らの研究では、子どもの内面(感情や考え方)をコントロールしようとする関わり方(心理的コントロール)が強いほど、思春期の子どもの不安感や反発が高まりやすいことが指摘されています。

「言うことを聞かせる」のではなく、「納得して動ける」関係を作ることが、結果的に親の言葉を届きやすくします。
子どもは親の分身ではないことを表すイラスト

⑤ 「見守り」のつもりが「傍観」になっていないか

思春期になると、子どもから「ほっといて」と言われることが増えます。それを真に受けてただ距離を置くだけになってしまうと、それは見守りではなく傍観です。

見守りと傍観の違い
・見守り:距離はあっても、変化に気づける関心を持ち続けている
・傍観:関わるのが面倒、または衝突を避けたいだけで、実質的に放置している

子どもが「踏み込んでほしくない」と言うのは、「何も知らなくていい」という意味ではありません。困ったときに頼れる距離感を保っておくことが大切です。

⑥ きょうだい比較は、思っている以上に残る

「お兄ちゃんはできたのに」「妹はちゃんとやってるのに」――悪気がなくても、比較された側には強く記憶に残ります。発達心理学者ジュディ・ダン(Judy Dunn)のきょうだい研究では、親がきょうだいに対して異なる関わり方をしていると感じること自体が、子どもの自己評価やきょうだい関係に影響を与えることが示されています。

比較したくなる気持ちは自然なものですが、口に出すかどうかは選べます。

「自分の子は自分とは違う」という感覚は必要か?

ここまで見てきた失敗例には、共通点があります。それは「自分の経験・価値観・希望」を、無意識に子どもに重ねてしまっていることです。

だからこそ、「この子は自分とは違う人間だ」という感覚を持っておくことは、子育てにおいてかなり重要です。これは突き放すという意味ではなく、「決めつけずに見る」という意味です。

子をしっかり理解している親は、何をしているのか

特別なことをしているわけではありません。共通しているのは、次のような姿勢です。

  • 結論を急がず、子どもの話を最後まで聞く
  • 「なぜそう思うの?」と理由を聞く(否定するためでなく、理解するために)
  • 親の正解を押し付ける前に、子どもなりの正解を一度受け止める
  • うまくいかなかった時も、人格ではなく行動について話す
  • 比較するなら「過去のその子」とだけ比較する
ただし注意したいこと
これらの行動も「絶対の正解」ではありません。子どもによって響き方は違いますし、同じ声かけでもタイミング次第で逆効果になることもあります。「この子にはどうなんだろう」と考え続ける姿勢そのものが、結局いちばん大事だったりします。

では、どうすればいいのか

完璧な子育てのマニュアルはありません。ただ、今日紹介した内容から言えるのは、次の3つだけ意識してみる、ということです。

  • 1. 「自分だったら」を一旦脇に置く ― 自分の経験は参考程度に
  • 2. 子どもの言葉や態度の「裏」を聞きにいく ― 表面的な反抗の奥にある気持ちを探る
  • 3. 「この子は自分とは違う」を時々思い出す ― 分かったつもりにならない

子育てに「正解」はなくても、「子どもをひとりの人間として見ようとする姿勢」は、どんな子どもにも、どんな時代にも、きっと有効です。

子どもをひとりの人間として理解する親子のイラスト

参考:Deci, E. L. & Ryan, R. M. の自己決定理論/Barber, B. K. らの心理的コントロールに関する研究/Dunn, J. のきょうだい関係研究 ほか発達心理学領域の知見を参考に構成しています。

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