東大生の勉強法をマネしたのに、なぜ自分だけ結果が出ないのか〔0043〕

「東大生の勉強法」「偏差値30から逆転合格した人の1日ルーティン」——そういう動画やブログを見て、同じことをやってみたのに、なぜか自分には効かなかった、という経験はないですか?
実はこれ、あなたの努力が足りないとか、頭が悪いとかじゃないんです。マネの仕方に、根本的な落とし穴があるだけです。
① 同じことをしているのに、なぜ差がつくのか
たとえば、こんな状況を想像してみてください。
→ 自分も同じようにやってみた。でも3週間後のテストの点数は全然上がらなかった。
これ、なぜだと思いますか?
答えは、「行動」だけをコピーして、「なぜその行動をするのか」という部分がすっぽり抜けているからです。
Aさんが毎朝単語帳をやるのには、理由があるはず。「昨日覚えたことを翌朝確認すると記憶に定着しやすい」という自分なりの実感があるかもしれない。あるいは、英語を使って留学したいという強い動機があるから、毎日続けられているのかもしれない。
その「なぜ」がないまま行動だけ真似しても、少し状況が変わればすぐに続かなくなります。
② 「生存者バイアス」という、目に見えない落とし穴
もうひとつ、知っておいてほしい重要な話があります。
「生存者バイアス(survivorship bias)」という心理学の概念です。
生存者バイアスとは?
「成功した人・うまくいった人」の情報だけが目に入り、「同じことをして失敗した人」の情報は見えなくなってしまう、という認知のゆがみのこと。
YouTubeでもSNSでも、「〇〇の勉強法で偏差値が20上がった!」という話は広まります。でも「同じ方法でまったく伸びなかった」人たちは、動画を作らない。だから目に入らない。
つまり、私たちが「あの方法は効果がある」と思い込むのは、うまくいった事例しか見えていないから、という可能性があります。
「弾痕が多い翼は、撃たれても帰ってこられた場所。本当に強化すべきなのは、弾痕がなかった部分——そこを撃たれた飛行機は帰ってこれなかったんだ」
これが生存者バイアスの典型例。見えている情報だけで判断すると、逆の結論になってしまうことがあるのです。
③ 先生が成功例を出すのに、なぜ自分には効かないのか
塾や学校の先生が「この子はこうやって偏差値を上げた」「うちの生徒でこんな合格した子がいる」という話をするとき、意図があるわけじゃないけど、無意識に成功した生徒の例しか出てこない、というのもあります。
同じ方法を試みて、うまくいかなかった生徒の話は、先生の記憶にも残りにくいし、例として出しにくい。これも生存者バイアスです。
だから先生の話が間違っているわけじゃない。でも「その方法が自分にも必ず効く」と思い込むのは、ちょっと早い判断かもしれません。
「成功した人の行動には、その人だけの動機・文脈・タイミングがある」
心理学的に言うと、行動の裏にある「内的状態」(なぜそれをしたいのか)が伝わらなければ、表面的な行動をマネしても同じ結果は出にくい、とされています。(バンデューラの社会的学習理論より)
④ じゃあ「マネ」は意味がないのか?
そんなことはありません。マネ自体は、むしろ学習の基本です。
ただし、「表面的な行動をコピーするだけ」のマネと、「なぜそれが効くのかを自分で理解してからやるマネ」では、結果がまったく変わります。
→ 眠いだけで何も変わらない
→ 自分なりのやり方で定着
行動の「型」をまず入れてみることで、後から「なるほど、こういうことか」と気づく場合もあります。武道や芸術の世界で「まず型から入る」というのも、そういう理由があります。
大事なのは、マネをしながらも「なぜこれをやっているのか」を自分の言葉で説明できるかどうか、です。
⑤ 「成功者のマネ」より大切な3つの問い
誰かの成功体験を参考にするとき、こんな問いを自分に投げかけてみてください。
- 成功者の行動をマネするだけでは効果が出にくいのは、「行動の裏にある動機・理由」が伝わっていないから。
- 「生存者バイアス」によって、うまくいかなかった事例は見えにくくなっている。塾や学校の先生が出す成功例も、無意識にこの影響を受けている。
- マネ自体は悪くない。「なぜ効くのか」を理解してからやるかどうかで、結果が変わる。
- 誰かの方法を参考にするとき、①なぜ? ②失敗例は? ③自分の状況に合ってる? の3つを確認してみよう。
「自分だけ損している」と感じるときは、比べている相手の「見えない部分」があることを思い出してみてください。
あなたがうまくいかないのは、あなたのせいじゃないかもしれない。ただ、「マネの仕方」を少し変えるだけで、同じ努力がもっと活きてくることがあります。


